Mr.Childrenの歴代シングルで、最も多くの売り上げを記録した大ヒット曲『Tomorrow never knows』。
90年代に続々とヒット曲を飛ばし、日本の音楽界のトップを走るようになったMr.Children。
そんな時代の寵児が抱えていた戸惑い、孤独な心境が表れているような一曲。
しかし最後には、「過去を振り返るのではなく、先が見えなくても未来に進んでいこう」というメッセージが歌われています。
いつか社会に出て大人になり、挫折や不条理な状況に直面した私たちにもそっと背中を押してくれるような、繊細でいて壮大な名曲です。
今回はこちらの『Tomorrow never knows』の元ネタを辿りながら、ビートルズの名盤を紹介したいと思います。
『Tomorrow never knows』について
『Tomorrow never knows』は1994年にリリースされたMr.Childrenの6枚目シングル。
1997年リリースのアルバム『BOLERO』、ベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』に収録されています。
元ネタはビートルズの同名タイトルから
Mr.Childrenの『Tomorrow never knows』というタイトルは、ビートルズが1966年に発表した同名タイトル『Tomorrow never knows』から拝借しています。
タイトルに込められた意味は「明日のことは誰にも分からない」。
しかし、英語の文法的に正しく訳すと「明日は何も知らない」という文章になります。
“Tomorrow never knows”
→“Tomorrow”が主語に来ているので「明日は何も知らない」。
まるで「明日」を擬人化させたような文章。なんだか違和感がありますね…
自然な日本語に翻訳しようと思ったら、“We”や“I”などの生物主語を持ってきます。
例えば…
“We never (about) tomorrow”
→「私たちは明日について何も知らない」
こっちの文章のほうが自然に訳せます。
(勉強ブログじゃないので英語の授業はこの辺にしておき…)
なぜこんなややこしい文法がタイトルになっているかというと、ビートルズのドラム担当、リンゴ・スターが何気なく呟いた言葉がきっかけ。
文法を崩したこの言葉に、作曲者であるジョン・レノンが哲学的なインスピレーションを感じてタイトルに採用しました。
このヘンテコ文法、決して英語に弱いからではなく、ちゃんとした元ネタがあって付けられたタイトルなんですね。
ビートルズが現代の音楽に与えた影響
ビートルズの『Tomorrow never knows』と、ミスチルの『Tomorrow never knows』、曲の雰囲気は全然違うんですが…
いかにビートルズの曲が革新的で、現代の音楽に影響を与えたのかを紹介したいと思います。
ビートルズの『Tomorrow never knows』は、サイケデリック・ロックと呼ばれるジャンルになります。サイケデリック・ロックとは、ドラッグによって見る幻覚をロックとして再現した音楽のこと。
実際、『Tomorrow never knows』はジョン・レノンが『チベット死者の書ーサイケデリック・バージョン』という本を読んだ影響で書かれた曲になります。
*臨死体験やドラッグがもたらす幻覚作用から、潜在的意識下での自我の喪失と再生へのプロセスを導く…といった、チベット仏教に属した研究を行った学術書です。
この頃インドに傾倒してたビートルズは、インドの伝統楽器であるシタールなどを取り入れました。
この独特なサウンドによって、エキゾチックで宗教的な世界観を表現しています。
また、テープをループさせたり、逆回転させるという手法も採用。
『Tomorrow never knows』のレコーディングはわずか3テイクのみ。これらのテープをいじったり連続的に繋げながら曲を完成させました。
*例えば冒頭で聴こえるカモメの鳴き声。これはポール・マッカートニーの笑い声を録音したテープの回転速度を早めて再現したもの。
現代では当たり前のように使われる“サンプリング”手法、この頃すでにビートルズが発明したんですね…!
『Tomorrow never knows』収録アルバム紹介
ビートルズの『Tomorrow never knows』は、1966年にリリースされた7枚目のアルバム『Revolver(リボルバー)』に収録されています。
ビートルズを“ライブバンドである前期”と“レコーディングバンドである後期”に分けるとしたら、ちょうど後期に差し掛かる時期に作られたアルバムになります。
この頃から実験的な手法を取り入れた楽曲制作に入ったため、当時の技術ではライブで再現することが難しかったんですね。
音楽の型を破り、ロックンロールの解釈を広げた名盤です。
『Revolver(リボルバー)』に収録されているその他の代表曲を紹介。
1.Taxman
「タックス」は「税」のこと。
ウィルソン政権が社会保障を充実させるため、富裕層に向けて税率95%という高い税率を課したことを批判した抗議曲。
2.Elenor Rigby
ポピュラー音楽の歴史で、初めて“孤独や死”をテーマにした楽曲だそう。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのみの演奏で、哀愁が漂っています。
『斜陽』(REFLECTIONに収録)の仮タイトルが『さらば、エリナー・リグビー』っていうのは、これが元ネタですね。
3.Here There And Everywhere
「ここでも、そこでも、どこででも君にそばにいてほしい」と歌ったラブソング。
国内外たくさんのアーティストにカバーされています。
4.Yellow Submarine
イエロー・サブマリンとは『黄色い潜水艦』の意味。子供向けに作られた童謡のような曲ですね。
1968年に制作された同タイトルのアニメ映画があるんですが(上の動画はそのワンシーン)、サイケデリックな色彩使いがもはや芸術です。
アートに興味がある方には、是非人生に一度は見てほしい映画です。
イエロー・サブマリン [Blu-ray]
ミスチルのルーツを辿ると、必ずビートルズに行き着くんですよね。
他にもちょこちょこビートルズネタが見つかるので、また何か紹介していきたいと思います。